JOURNAL

見えない根を想像しながら、ウェブサイトを育てる

朝、庭に出て水をまく手を止めて、土の下を想像することがあります。

見えない土の中で、根が少しずつ広がっていく。その様子を思い浮かべながら、今日はどこに水をやろうかと考えます。

植えたばかりの若木なら、まだ根が浅いから、株元を中心に。何年も経った木なら、枝先の下あたりまで根が伸びているはずだから、少し離れた場所にも水を撒く。

目に見えるのは、葉の茂り具合と幹の太さだれど、本当に大切なのは、土の中に広がる根だといつも思います。

見えない構造を想像する

ウェブサイトの運用も、似たところがあります。

ページを公開したあと、訪れる人の数や滞在時間を見ながら、少しずつ手を入れていく。そのとき想像しているのは、表に見えている画面だけではなく、その裏側で静かに育っている構造です。

たとえば、ひとつのページに訪問者が集まっているなら、そこから次にどこへ進んでもらうか。関連する別のページへの導線を整えたり、似た内容のページ同士をつなぎ直したり。目には見えないけれど、サイト全体の骨組みが、少しずつ変わっていく。

Google Search Consoleを開いて、どのキーワードで辿り着いたかを確認する。よく使われている検索ワードと、実際のページの内容がずれていれば、言葉を選び直す。訪問者が多いのに次のページへ進まれないなら、案内の仕方を変えてみる。地味な作業だけれどこういう手入れが積み重なって、サイトはだんだん、訪れる人の動きに合った形になっていきます。

根が張るまで

庭の樹木は、植えた翌年にいきなり大きくなるわけではありません。最初の数年は、むしろ地上部の成長が遅く見えることもあります。けれどその間、土の中では根が静かに広がっていて、やがてその広がりが、枝葉を支える力になる。

ウェブサイトも同じだと思う。立ち上げた直後は、アクセスも少なく、反応も見えにくい。ページを少しずつ増やし、内容を見直し、構造を整えていくうちに、検索エンジンに認識され、訪問者の導線がなじんでいく。

若い頃の私は、ページを公開した直後に数字を追いすぎていました。アクセスが増えない、反応がない、と気にしながら、あちこち手を加えては戻し、を繰り返す。今思えば、あれは根が張る前に枝を切り続けていたようなものだった。成長を焦るあまり、育つ時間を奪っていました。

いつ頃からか、それをやめました。 劇的なきっかけがあったわけではないですが、庭仕事を続けるうちに、植物の時間感覚が少しずつ自分の中に入ってきた、ということかもしれません。今では、数字は週に一度か二度、落ち着いて眺めるだけにしています。毎日見ても、根の伸び方はわかりませんから。

大切なのは、目に見える部分だけを追いかけないこと。土の下で根が育つように、サイトの内側で情報がどうつながっているか、訪問者がどう動いているかを、想像しながら手を入れていく。

そして、手を入れる場所はウェブサイトの中だけとは限りません。 アクセスデータを読み解くうちに、地域の近隣ユーザーの比率が高いことがわかってきたり、訪問者の年齢層がおぼろげながら見えてきたりする。そうなれば、地域の店舗に置く紙の案内を設計したり、その年齢層に響くコンテンツを拡充したり——施策は縦にも横にも、思いもよらない方向へ伸びていく。

植物の根が、土の中で縦横無尽に広がるように。ひとつのデータが、ウェブの外の世界とつながる入り口になることも、少なくない。

土の感触

少し話が戻りますが、庭で水をやるとき、足の裏から伝わってくるものがある。

踏んだ土が固ければ、水が浸みこみにくい。やわらかすぎれば、根が酸欠になる。声に出すほどではないけれど、足の裏がそれを教えてくれる。目で見るより先に、体が状態を読んでいます。

ウェブの仕事でも、数字を見るより前に、「このページはなんとなく滞っている」と感じる瞬間がある。なんだろう、あれは——と思って確かめると、やはりどこかに詰まりがある。導線が切れていたり、情報の並びが前後していたり。

経験を積むと、データを読む前に体が先に動くことがある。直感、と言えば少し大げさかもしれませんが、そういう感触が育ってくるまでには、やはり時間がかかります。

同じように手を入れている人へ

こういう話を人にすると、「地道ですね」と言われることがある。たしかにそうかもしれません。でも、庭仕事も同じで、こういうずっと言われていることが必要なんだよな、と思います。

毎朝水をやり、土を見て、季節ごとに剪定する。その繰り返しの中で、樹木は少しずつ姿を変えていく。特別なことは何もない。けれどその積み重ねがなければ、根は張らない。

ウェブサイトを持っている人の中に、同じように、地味に手を入れ続けている人がいる。アクセス数が劇的に増えるわけでもなく、誰かに褒められるわけでもない。それでも、半年前と今とでは、確かに何かが変わっている。そういう変化をいろいろなクライアントで見ています。

そういう感覚を、私は悪くないと思っています。

育てる、ということ

庭仕事をしていると、植物は自分の力で育つものだと感じます。私にできるのは、水をやり、土を整え、ときどき枝を切ること。それ以上は、樹木自身が時間をかけてやってくれる。

ウェブサイトも、公開したら終わりではなく、そこから育てていくもの。訪問者の動きを見て、少しずつ手を加えていく。そのとき、画面の奥にある構造や流れを想像できるかどうかが、たぶん、大きく関わってくるのだと思っている。

今朝も、ホースを持ったまま土を眺めていました。 根がどこまで伸びているか、まだよくわからない。それでも、水をやる場所は、なんとなくわかるから不思議です。

渡部忠

ロゴやパッケージ、Webサイト——デザインに関わることで迷っているとき、手がかりになればと書いています。もし具体的に動き始めたいと感じたら、下からご相談ください。

渡部 忠(わたなべ ただし)

デザイナー

  • STUDIO FELLOW — ロゴ・パッケージ・Web・グラフィック・ブランドのデザイン(2004年〜)

長野県安曇野市を拠点に、全国のクライアントと仕事をしています。

Webやグラフィックのご相談を受け付けています

CONTACT →