小さな会社のブランディングをそろそろ整えたい。
でも、何から始めればいいのだろう。
そう感じてネットで検索すると、出てくるのは大企業の事例や、知名度ゼロから人材を採るための採用ブランディング、社長個人の発信で指名される方法、といった話が並びます。
今日はその手前で、自社にすでにいる人と、すでに来てくれている人を、もう一度見つめ直す4つの視点を、ひとつの考え方として書いてみます。
小さな会社のブランディングが、商品より先に「人」になる理由
大きな会社のブランディングは、商品やサービスの輪郭から組み立てていくことが多いです。
広告や店舗の体験、パッケージのトーンを揃えて、ブランドの像を社外に作っていきます。
小さな会社の場合、その順序が少し変わります。
お客様が最初に触れるのは、商品より前に、電話に出る人の声、見積もりを書く人の文面、現場に立つ人の所作かもしれません。
その手触りが、その会社の印象になることが多いと感じています。
商品の品質は、もちろん前提として大切です。
ただ、似た品質のものが他にもある領域では、最後に選ばれる理由が「あの人がやっているから」になることがよくあります。
打ち合わせの帰り道に、思い返すのは商品のスペックではなく、対応してくれた人の表情だったりします。
つまり、小さな会社のブランドは、人の佇まいの中にすでに芽が出ています。
(もちろん、すべて大きな会社も同じではあるのですが)
新しく作るというより、もうそこにあるものを言葉にする作業です。
ブランディングを「人」から始めるのが自然なのは、規模の小さな会社ほど、商品と人の距離が近いからです。
中小企業のブランディングを個人から始めるとき、よく聞く方法と、その手前で考えたいこと
「中小企業 ブランディング 個人」とネット検索すると、よく出てくるのは2つの方向です。
ひとつは、社長のパーソナルブランディング。
自分の強みを50個書き出し、SNSで発信して「◯◯なら◯◯さん」と指名される存在を作る、という流れです。
もうひとつは、採用ブランディング。
小さな会社でも働きたいと思ってもらえるように、社内の文化や働く人の声を言語化して、採用サイトや募集要項に落としていく、という方向です。
どちらも筋の通った方法で、間違ったことは書かれていません。
ただ、この2つは「外に向けて新しく打ち出す」前提で書かれていることが多いです。
打ち出す手前で、自分の会社の中にすでにある材料を見つめておかないと、発信が空回りしてしまうことがあります。
正直、私自身もこの順序を間違えたことがあります。
SNSの設計から先に取りかかったクライアントの仕事で、後から「中の人の話と発信の温度がずれている」とご相談をいただいて、いったん戻ったことがありました。
順序としては、まず内側を見つめるほうが、後の発信が静かに効いてきます。
新しく作るより、すでにある人柄と関係を言葉にする。
そのひと手間で、ブランディングが「会社全体の自然なふるまい」に馴染んでいきます。
小さな会社のブランドづくりを、人から組み立てる4つの視点
ここから、小さな会社のブランドづくりを「人」から組み立てるための、4つの視点を書き出します。
視点1:自分が、ふだん何をしている人か
社長や店主自身が、ふだん何に時間を使い、何を大切にしているかを書き出してみます。
仕事の中身そのものより、「どう向き合っているか」のほうが、人柄として伝わります。
朝に何をしているか、断っている仕事はどんな仕事か、リピートしてくれているお客様にどう接しているか。
そういう日常の動詞が、ブランドの土台になります。
視点2:いま働いている人たちの、地味で律儀なところはどこか
スタッフや仲間がいる場合、その人たちが当たり前にやっていることを書き出します。
本人が「これは仕事だから普通」と思っていることほど、価値の輪郭になりやすいです。
毎朝の準備、お客様への挨拶、納品時のひと言、片付けの順序。
派手さはないけれど、続いてきた理由がそこにあります。
視点3:いま来てくれているお客様は、なぜ続けてくれているのか
新しい人を集める前に、すでに来てくれている人を見ます。
3人でいいので、思い浮かべて、なぜ続けてくれているのかを言葉にしてみます。
「◯◯さんがいるから」
「気を遣わなくて済むから」
「いつも同じ温度で接してくれるから」。
こうした言葉の中に、自分たちの強みがそのまま入っていることがよくあります。
視点4:3年後も、その人が会社にいるかどうか
社長自身、スタッフ、関わってくれている職人さんや取引先。
3年後も同じ顔ぶれでこの仕事をしているかを、ゆっくり考えてみます。
ブランドの「人」は、入れ替わりが激しいと積み上がりません。
逆にいえば、長く一緒にやっていく前提が見えると、その人を中心に組み立てていく覚悟が出てきます。
あるクライアントから、こんな話を聞いたことがあります。
小さなパン屋を続けてきた方で、ブランドを整え直したいというご相談でした。
お話をうかがうと、毎朝5時から仕込みをして、近所の常連さんが朝の散歩のついでに寄ってくれる、という日常がすでにありました。
新しく作るものはほとんどなくて、その日常を写真と短い文章で静かに見せる方向に整えただけで、外から見えるブランドの輪郭がすっと立ち上がりました。
この4つを書き出してから、外向けの発信や採用の話に移ると、伝えるべきことの順序が落ち着きます。
ひとつの考え方として、強みは作るのではなく見つけにいく
小さな会社のブランディングを「人」から始めるとき、いちばん大事なのは順序です。
新しく強みを作るのではなく、すでに毎日やっていることの中から、強みを見つけにいく。
それを言葉にして、社内と社外に静かに渡していく。
その順序で進めると、発信や採用の場面で、無理のないブランドになります。
正直、ここは毎回迷う部分でもあります。
新しく打ち出すほうが分かりやすく、勢いも出ます。
ただ、見つけにいって整えたブランドのほうが、長くもちます。
本人たちが普段から続けていることだから、無理がありません。
それが唯一の正解だとは思いません。手段はいろいろあります。
これは私が、多くのクライアントに提案する方法だと思って、ひとつの参考にしてみてください。
ブランディングを始める前に、4つの視点をゆっくり書き出してみる時間を、少し取ってみる。
そのひと手間で、後の判断が静かになっていきます。




