先日、名古屋へ出張してきました。
1日目は、名古屋の食材卸の会社で、社員の方に向けたクリエイティブのセミナー。翌日は、その会社の新しい商品にまつわる取材で、同じ名古屋市内で飲料を作る工房へうかがいました。商品のプロモーション用のホームページと冊子を作るための取材です。
どちらも、現地に足を運び、人と顔を合わせて話す仕事です。そして、どちらの日も、いつもと同じように「来てよかった」と感じました。
安曇野の事務所で、パソコンに向かってデザインばかりしている。私には、そんな印象があるかもしれません。ここから先では、セミナーと取材の現場で感じたことと、私が外に出かけていく理由を書いてみます。
1日目は、撮影のセミナーでした
セミナーのテーマは、自社のオンラインショップに載せる写真を、社内で撮れるようになること。外に頼まずに自分たちで撮る、いわゆる「内製」のための撮影の話です。
商品の写真は、オンラインショップの印象を大きく左右します。とはいえ、撮影のたびにカメラマンに頼むのは、費用も時間もかかります。新しい商品が出るたび、季節が変わるたびに写真が必要になる仕事では、なおさらです。
そこでお話ししたのが、高価な機材をそろえることよりも、いつでも準備できる設備で撮影をこなす方法でした。社内にあるもの、近くで手に入るもので、光を整え、背景を用意し、商品をきちんと見せる。特別な日にだけできる撮影ではなく、思い立った日にすぐ始められる撮影です。
いつもの台所で、おいしく作る
料理に少し似ていると、私は考えています。
おいしいものを作るのに、高価な鍋や専用の道具は、必ずしもいりません。使い慣れたフライパンと、いつもの台所で、火加減と下ごしらえを覚えれば、毎日の料理はちゃんとおいしくなる。むしろ、特別な道具がないと作れない料理は、なかなか毎日の食卓には並ばないものです。
撮影も同じで、身の回りの環境と道具で撮れる方法なら、明日からでも、担当の方が替わっても続けられます。内製で問われるのは、一度きれいに撮れることよりも、続けられることのほうです。
「それなら、できそう」という安心
印象に残ったのは、参加された方々の表情でした。
ふだんから写真のことで悩んでいて、でも、どう解決したらいいのかがわからない。話をうかがっていると、そういう方が多いように感じました。うまく撮れないのは、機材が足りないからだと考えていた方もいたかもしれません。
その悩みの多くが、高額な機材ではなく、身の回りで用意できる環境と道具で解決できる。そう伝わったとき、会場の空気がふっとやわらいだように見えました。「それなら、自分たちでもできそう」という安心が、表情に出ていたのだと思います。
2日目は、新しい商品の取材へ
翌日は、前日にセミナーをした会社の、新しい商品にまつわる取材でした。うかがったのは、名古屋市内で飲料を作っている工房です。商品のことはまだ詳しく書けないのですが、作り手の方にお話を聞き、作っている現場を見せていただきました。
取材に行くと、毎回のように感じることがあります。作り手の方は、その商品を本当に愛していて、まるで自分の子どものように思っている、ということです。
こちらが少し質問して聞き出せるのは、そのほんの一部です。言葉になって出てくる話の後ろに、試して、迷って、また試してきた日々がある。その深さを、お話を聞きながら、ひしひしと感じます。今回も、まさにそうでした。
その思いを汚さないように書く
だからこそ、取材のあとに文章を書くときは、いつも気を引き締めます。
聞いた話をわかりやすく整えることは、もちろん欠かせません。けれど、整えすぎると、作り手の方の思いの温度が消えてしまうことがあります。きれいな言葉に置き換えたつもりが、その人らしさを削ってしまう。それは避けたいところです。
話してくださった言葉の手ざわりを残しながら、初めて読む方にも届く形にする。その思いを汚さないように書き出すことが、取材をする者の役目だと考えています。ホームページや冊子の見た目を作るのと同じくらい、ここに時間をかけています。
知見がぶつかると、次が浮かんでくる
2日間を通して、いちばん「来てよかった」と感じたのは、会社の方々や工房の方と、直接言葉を交わせたことでした。
食材を届ける会社も、飲料を作る工房も、日々いろいろな取り組みをされています。商品を作り、届け方を考え、お客様と向き合っている。その中で積み重ねてきた知見は、私の知らないことばかりです。そこに、私がデザインや撮影、取材の仕事で得てきた知見がぶつかります。
そうすると、たいてい何かが生まれます。「それなら、こんなこともできるかもしれない」という考えだったり、「次はこれを一緒に」という小さな約束だったり。同じ場所に立ち、同じものを見ながら話すからこそ、次へつながるものが浮かんでくるのだと感じています。
事務所の外にも、よく出ています
冒頭にも書いたとおり、私は事務所でデザインばかりしているように見えているかもしれません。けれど実際は、よく外に出ますし、人と関わりますし、話しますし、取材もします。今回のように、遠くの街まで出かけていくこともあります。
社内で撮影や発信をできるようにしたい、という場面。新しい商品や取り組みを、取材を通して伝えたい、という場面。まだ形になっていない、ぼんやりとした段階のお話でも、顔を合わせて話すところから一緒に考えられたら、こんなにうれしいことはありません。
いつもの台所で作る料理のように、特別なことをしなくても、会って話すだけで見えてくるものがあります。次は、どの街で、どんな方と話せるのか。そう考えると、出張の荷物を詰める時間も、少し楽しみになります。
