
パスタの分量で、毎回同じところで立ち止まっていた
鍋のふちから、ふつふつとお湯が湯気を立てています。手はスマホの中をさまよっています。「2人分のパスタって、何グラムだったっけ」「オイル系だと塩はこのくらい、でもクリーム系だと違ったような……」。以前開いたページのブックマークだったり、自分用に書き残したメモだったりを、湯気に炙られながら探す。あの、ちょっとしたじれったさに覚えがある方は、私だけではないと思います。
麺の量、茹でる時のお湯の量、塩加減、そしてソースの材料の配分。オイル系、トマト系、クリーム系と、ソースの種類によって黄金比はそれぞれ違い、人数が変わればかけ算も必要になります。だから鍋の前で、毎回同じところに立ち止まってしまうんです。
覚えておけないなら、覚えなくていい仕組みを作ればいい
私は週に3回ほど、ランチにパスタを作ります。決して大げさな趣味というわけではなく、ただの日課です。そんな日課の中で、パスタの本を何冊も買っては読み、実際に作り、妻に出し、「あ、これは違うな」「こっちの配分の方がしっくりくる」と、試行錯誤を重ねてきました。そうやって少しずつ体に馴染んでいった、自分にとって「これがおいしい」と思える分量が、ようやく手元にあります。
問題は、その分量を自分の頭の中にしか置いていなかったことです。ソースの種類ごとに、人数ごとに、微妙に違う数字たち。覚えていられれば苦労はしないのですが、日々の忙しさの中で、そのつど記憶から引っ張り出すのは、思っていたより骨が折れる作業でした。
そこであるとき、ふと気づいたんです。覚えておくのが苦手なら、覚えなくていい仕組みを作ってしまえばいい、と。人数とソースの種類を選ぶだけで、あの馴染んだ分量がぱっと出てくる。それなら、鍋の前で立ち止まる時間そのものがなくなります。デザインの仕事柄、道具を「使いやすく整える」ことにはわりと馴染みがあります。ならば、キッチンで使う小さな道具のひとつとして、自分のために作ってしまおうと思い立ちました。
「おいしいパスタ」でできること
そうして生まれたのが、「おいしいパスタ」という小さなツールです。人数と、作りたいソースの種類(オイル・トマト・クリーム)、それから茹で時間を選ぶだけで、麺・水・塩・具材の分量が、その場でぱっと表示されます。中に入っている数字は、何冊もの本と、何度もの試作と、妻の「あ、こっちの方がいいかも」というひとことを経て、私がようやく「これだ」と思えた黄金比です。
ここで先にお伝えしておきたいのですが、私は料理の専門家でも、ましてやパスタのプロでもありません。あくまで、自分の週3回のランチのために積み重ねてきた、超個人的な目安です。正解を提示しているつもりはまったくなく、「素人がここまで試行錯誤すると、こういう数字に落ち着いた」という、ひとつのサンプルとして受け取っていただけたら、ちょうどいい距離感だと思っています。

分量が出たら、あとは画面の手順に沿って進むだけです。
- パスタを茹でる
- ソースのベースを作る
- 具材に火を通す
- パスタの茹で汁を加えて乳化させる
- ソースとパスタを合わせる
- 盛り付ける
この6つのステップが順番に並んでいるので、途中で「あれ、次は何だっけ」と手を止める必要もありません。
それから、人によって「ちょうどいい」はそれぞれ違うはずです。にんにくをもっと効かせたい人、塩をひかえめにしたい人、生クリームをたっぷり使いたい人。そのために、設定画面から黄金比の数値そのものを編集して、自分用に保存できるようにもしました。私の「ちょうどいい」をそのまま押しつけるのではなく、そこを起点に、使う人それぞれの「ちょうどいい」に育てていってもらえたらと思っています。
使い方と、こんな時に役立ちます
使い方そのものは、拍子抜けするくらいシンプルです。画面を開いたら、まず人数を「1人前」か「2人前」から選びます。次にソースの種類を、オイル・トマト・クリームの中から選びます。最後に、パスタの袋に書かれている茹で時間をそのまま入力すれば、その場で麺・水・塩・具材の分量がぱっと表示されます。茹で時間は、袋の表示通りの分数を入れるだけで、そのぶん各ステップの湯で加減までぴたりと合ってくるための項目です。あとは画面に並んだ手順を、上から順になぞっていくだけです。
もともと「たくさん作れるツール」を目指したわけではなく、あくまで自分のランチのための道具なので、選べる人数は1人前と2人前まで。それでちょうどいいんです。平日、仕事の合間にひとりでささっと済ませたい日は1人前を選びます。急いでいても、頭の中で分量を掛け算する手間がないので、鍋の前に立ってからの動きがずいぶん早くなりました。
休日、妻と二人でゆっくりお昼を囲みたい日は2人前を選びます。あの、何冊もの本と試作を経てようやく辿り着いた分量が、迷うことなくそのまま出てくる。多めに作って余らせてしまったり、逆に少なくて足りなかったりということもなくなりました。大人数のパーティー向けにはできていませんが、そこは最初から狙っていない部分でもあります。
鍋の前の、あの時間がなくなった
今では、鍋の中でこぽこぽと気泡が立ちはじめていても、スマホの中をさまよう必要はありません。人数とソースを選べば、それだけで手が次の動きに進みます。あの、ちょっとしたじれったさに立ち止まっていた時間は、もう私の台所にはありません。
一番手に馴染んでいるHTMLで、どなたのスマホでも使用できる、ブラウザからそのまま開けるページとして仕上げました。パソコンからでも、キッチンに置いたスマホからでも、ぱぱっと開いて使えます。先にお伝えした通り、料理の専門家がまとめた黄金比ではなく、料理の素人が、自分のランチのために積み重ねてきただけの目安です。それでも、もし同じように、鍋の前でスマホの中をさまよってしまう方がどこかにいたら、「おいしいパスタ」をそっと覗いてみてもらえたら嬉しく思います。
