ターゲットを絞ったほうがいい、と言われたことがある方は多いと思います。
でも、いざ絞ろうとすると手が止まる。
性別や年齢を書こうとしても、それが本当に自分のお客様と重なっているのか自信が持てない。
絞れないのは優柔不断ではなく、材料がまだ揃っていないだけのことが多いです。
今日は、ターゲットが絞れない原因について、ペルソナの枠を埋めるよりも先に見ておきたい場所を、3つほどに分けて書いてみます。
ターゲットが絞れない原因として、語られにくいこと
ターゲットが絞れない原因をネットで調べていくと、「勇気が足りない」「売上が減るのが怖い」という心の話で説明される記事が多いように感じます。
たしかに、絞ることで届く相手が減るかもしれない、という不安はあると思います。
ただ、自分の現場で見ていると、絞れない理由はもう少し手前にあることが多いです。
自分が大切にしていることが、まだ自分のなかで言葉になっていない。
あるいは、すでに来てくれているお客様の輪郭が、ぼんやりとしか見えていない。
その状態でターゲットを絞ろうとすると、何を基準に絞ればいいかが分からないまま、本やネットの例を借りてくることになります。
借りてきた人物像は、自分の事業の手触りからは少しずれていきます。
絞れないのは、決断力の問題ではなく、絞るための材料が、まだ手元に揃っていないだけ。
そう置き換えると、次にやることが少し変わってくると思います。
ペルソナ設定の枠を埋めようとして、手が止まる理由
ターゲットの絞り方の入り口として、ペルソナ設定が紹介されることが多いです。
年齢、性別、職業、年収、家族構成、趣味、休日の過ごし方。
表のような形で項目が並んでいて、それを埋めることから始めるパターンですね。
3C分析、STP分析、SWOT分析。
──そうした言葉が並んでいるのを見たとき、少し拒否反応が出る方も多いと思います。
私もそのひとりかもしれません。
このフレームそのものが悪いわけではないと思います。
考えを整理するための道具として、ちゃんと役に立つ場面もあります。
ただ、入れる順序が逆になっているときに、手が止まりやすい。
枠を先に置いて、そこを埋めるために人物像を組み立てようとすると、自分の事業の現場とつながらない人が生まれます。
「30代女性、年収500万、休日はカフェ巡り」と書いたところで、その人が本当に明日お店に来てくれる人なのかは分かりません。
ペルソナ設定を全部やめましょう、という話ではなくて、その前に観察する時間を少し取ってみる、ということです。
枠を埋める作業は、観察したあとのほうが、ずっと早く進みます。
正直なことを言うと、私自身も、新しいプロジェクトのたびにペルソナシートを全部埋めようとして、途中で止まったことがあります。
書けそうで書けない。材料が手元に揃っていなかっただけでした。
※ ペルソナとは:自社の商品・サービスを使う「理想の顧客像」を、架空の一人の人物として具体的に描いたもの。年齢・性別・職業・家族構成・休日の過ごし方など、細かく設定します。マーケティングや商品開発の現場でよく使われる手法です。
ターゲットの絞り方の前に、目の前のお客様を観察する
ここからは、ターゲットの絞り方の手前で、粒度の話をお伝えします。
ターゲットが絞れない原因の多くは、観察の時間がまだ取れていないことだと思っています。
視点1: 過去半年で「また来てくれた人」を書き出す
新規のお客様ではなく、2度目以降に来てくれた方を、思い出せるだけノートに書き出します。
お名前が分からなくても、「青いシャツの方」「水曜の午後に来る方」というメモで十分です。
15人くらい書ければ、傾向が見えてきます。
ノートを開いて書き出し始めると、思いのほか顔が浮かんでくるものです。
名前を知らない方でも、「あの方」と思いながら書き始めると、意外と手が動きます。
視点2: 年齢・性別ではなく、「どんな日にどんな気持ちで」を並べる
書き出した方々を、属性ではなく、来てくれる場面の側から並べてみます。
仕事の合間にひと息つきにくる、休日に家族と歩いてくる、自分へのご褒美に少し奮発しにくる。
属性よりもこちらのほうが、自分のお店との関わりが見えてきます。
あるクライアントから、こんな話を聞いたことがあります。
「リピートのお客様を書き出してみたら、半分以上が、平日の夕方ひとりで来る方だったんです。狙ったわけじゃないのに」。
狙わずに集まってきている景色のなかに、その店の輪郭はすでに表れています。
視点3: そのなかから、長く付き合いたい1〜2人を選ぶ
15人くらい並べると、そのなかに、「この方たちと長くお付き合いしたい」と感じる輪郭が浮かんできます。
そこから1〜2人に絞っていきます。
「そんなことをしたら、他の方に失礼ではないか」——そう感じる方も、いると思います。
絞ることは、誰かを断ることではなく、誰かに一番で届けようとすることだと、私は思っています。
ここでようやく、ターゲットという言葉が地に足のついた形になります。
ペルソナの枠は、このあとに埋めても遅くありません。
むしろ、観察を経たあとのほうが、書ける項目がぐっと増えます。
ひとつの考え方として、誰に届けたいかは、誰と居たいかから決まる
ターゲットを絞ることは、来てくれる人を減らす決断ではなくて、長く居てくれる人と、ちゃんと向き合う準備だと思っています。
枠を埋めるのが先か、観察するのが先か。
──同じペルソナ設定でも、順序が変わるだけで、出てくる答えはずいぶん違ったものになります。
ターゲットが絞れない原因の多くは、決断力ではなく、観察の時間がまだ取れていないこと。
そう置き換えてみると、明日からできることがひとつ見えてくると思います。


