商品のパッケージを作ろうとして見積もりを取り始めると、依頼先がたくさんあることに気づきます。
AIサービス、クラウドソーシング、フリーランスのデザイナー、デザイン会社、それから印刷会社のセット見積もり。
同じ「パッケージを作る」という言葉のなかに、数千円から数百万円までの幅があります。
その見積もりを見て迷うのは当然で、それだけご自身の商品を丁寧に扱っているということだと思います。
今日は、そんな見積もりを取り始める前に、知っておきたいことを書いてみます。
パッケージデザインの依頼先を比べるとき、価格表だけでは決め手が出てこない
パッケージデザインの依頼先を比較するとき、インターネット上にはたくさんの比較できる情報が出てきます。
料金とメリット・デメリットが表にまとまっていて、入り口としてはとても便利です。
ただ、その表をいくら眺めても、自分の商品にどれが合うかは見えてきません。
試作中の商品なのか、量産が決まっているのか。
季節で動く商品なのか、定番として続けていく商品なのか。
商品の現在地によって、選ぶべき相手は変わるはずなのに、比較表はそこまでは教えてくれません。
また、パッケージは、刷ったあとに直しにくいところがあります。
版を起こしたり、抜型を作ったり、最低ロットを抱えたりするので、頼んでからの後戻りに時間と費用がかかります。
だからこそ、見積もりを取り始める前の段階で、依頼する相手をよく見ておきたいと思っています。
依頼先を比べるときに本当に比較したいのは、価格や納品物だけでなく、その人やその会社と「どう仕事が進んでいくか」という流れだと思います。
最初の打ち合わせで何をたずねられるか、印刷現場との距離は近いか、刷り上がったあとも連絡が取れるか。
ウェブサイトに並ぶ情報よりも、ウェブサイトに出ていない部分が、パッケージの仕上がりに効いていきます。
パッケージデザインの依頼先5つと、それぞれのスタイル
パッケージデザインの依頼先を大きく5つに分けて、それぞれのスタイルを並べていきます。
価格よりも、「どんな関係で仕事が進むか」のほうに重心を置いてみます。
AIサービス
AIサービスは、対話で候補を作ってくれる仕組みです。
手元で何案でも試せる代わりに、相手がいないので、商品の文脈はこちら側で全部抱えることになります。
叩き台が欲しい、方向の見当を付けたい、という段階には向きます。
ただ、最終的な印刷データや、紙・容器の手配は別に必要になります。
クラウドソーシング
クラウドソーシングは、コンペで複数のデザイナーから案が集まる仕組みです。
提案の数は多い一方で、ひとりひとりとの会話は短い。
商品の話を深く聞いてもらうというより、出てきた案からピンと来るものを選ぶ、という形になります。
フリーランスのデザイナー
フリーランスのデザイナーは、ひとりの相手と向き合って進める形です。
商品の話を聞いてもらい、考え方を共有しながら数案に絞っていく。
納品後も同じ人とやりとりが続きやすく、シリーズ展開や次の改訂を頼みやすい関係になります。
デザイン会社
デザイン会社は、チームで動く分、リサーチや商品全体のラインナップ、店頭での見え方までまとめて受けてくれる範囲が広いです。
打ち合わせの回数が多くなる代わりに、パッケージ単体ではなく、商品全体の整え方として進んでいきます。
印刷会社のセット見積もり
印刷会社のセット見積もりは、デザインと印刷を同じ会社が引き受ける形です。
版や紙、抜型の手配まで1つの窓口で動く便利さがあります。
ただ、デザインは社内の体制によっては印刷の都合に寄りやすいので、商品の中身まで一緒に考えてもらえるかは、最初の会話で確かめておきたいところです。
この5つは、「どれが上」というより、「どこまで一緒にカタチを作るか」の幅で並んでいる、と見るのがよいと思います。
パッケージデザインを依頼する前に、相手のここを見ておく
依頼先別の価格を比べるよりも前に、見積もりを取り始める段階で観察できる場所があります。
デザインの仕事を受けてきた側の感覚も入れながら、3つに絞って書いてみます。
ひとつめ:過去の仕事が、今も掲載されているか
依頼候補先のウェブサイトのポートフォリオに並ぶパッケージの事例は、最新のものを多く掲載していると思います。
私が見ておきたいのは、3年前・5年前に作ったパッケージが、今もそのお店や売り場で使われているかどうかです。
ウェブサイトで紹介されている古い仕事を、検索して現状を見にいく。
商品ページで使われている、店頭の写真に映っている、リピートで刷り直されている。
いまもそのパッケージが使用され続けているような案件が多い依頼先候補は、流行の手前で止まる感覚を持っている、と感じます。
ふたつめ:最初のメールで、商品の中身まで聞かれるか
あるクライアントから、「他のところは刷り部数と納期だけ聞かれたんですが、こちらは先に商品の中身と、誰に届けたいかを聞かれて、少し驚きました」と言われたことがあります。
価格を答える前に、誰に届けたいか、どんな場面で手に取られるか、いつまでにどう育てていきたいかをたずねる相手は、見積もりを「箱」ではなく「設計」として組み立てています。
商品の中身まで聞いてくる相手は、刷り上がった後にも一緒に考えてくれる相手だ、と思って良いと思います。
みっつめ:印刷現場との距離が近いか
パッケージは、画面のなかで完結しないところが、ロゴやWEBと違うところです。
紙の手触り、インクの乗り、色の沈み方、抜型のおさえられる範囲。
これらは印刷現場と一緒に詰めていく部分です。
正直、ここは私も毎回迷うところで、自分のデータが現場でどう刷り上がるかを、納品の前に試し刷りで確かめさせてもらうことが多くあります。
試作にどれくらい付き合ってくれるか、印刷会社の担当者と直接話せる場を持ってくれるか。
この距離感が、刷り上がったあとの後悔の量を変えていきます。
これら3つは、見積もりの数字の前に、どの依頼先でも観察できる部分だと思います。
ひとつの考え方として、長く付き合える人を選ぶ
依頼先を比べる作業はもちろん大切ですが、その先にあるのは「1度刷ってもらう人」を選ぶことではなく、「これから何度か手を入れていく人」を選ぶ作業だと思っています。
パッケージは、刷って終わりではなく、店頭に並べ、商品が育つにつれて、少しずつ整え直していくものです。
色味の微調整、シリーズの追加、季節限定の派生、改訂版の刷り増し。
そういう小さなやりとりを、気軽に頼める相手かどうか。
ここが、価格表には載らない部分の核だと思います。
短いサイクルで刷り直し続ける道と、必要な深さで作って少しずつ整えていく道。
どちらが正解ということではなく、自分の商品がどちらの時間軸で動いているかを、依頼先を比べる前に決めておくと、見え方が変わってきます。


